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研究内容

全ての生命科学の基礎は遺伝学である

遺伝とは遺伝情報すなわち遺伝子(gene)が親から子に伝わることであり、すべての生物にとって最も重要な事象です。遺伝学(genetics)は、遺伝の仕組みや物質的基礎を明らかにする学問分野であり、いろいろな生命現象の解明という基礎科学から作物の育種という応用科学までの基本になるものです。本研究室では、分子細胞遺伝学的及び分子集団遺伝学的手法により、作物やモデル植物の染色体(遺伝子の集合体)とDNA(遺伝子の構成物質)の構造、機能、変異及び操作の研究を行っています。


ムギ類の染色体を切断する遺伝子の機能を解析する

コムギに近縁種から導入した配偶子致死染色体は、自己を待たない配偶子で染色体切断を起こします。この染色体を使うとムギ類の染色体を切断し、繋ぎかえることができます。この仕組みを利用してコムギ自身の染色体、さらにライムギやオオムギ染色体に構造異常を起こし、動原体の構造と機能の解析やゲノム地図の作成に貢献してきました。現在は、配偶子致死遺伝子を単離し、その機能を解明することに挑戦しています。

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配偶子致死遺伝子による花粉細胞での染色体切断


コムギの有用遺伝子を単離・利用するための研究基盤を形成する

コムギはヒトゲノムの6倍近い巨大なゲノム(17 Gbp)を持ちます。ゲノムという大海の中で有用遺伝子座に難破することなく到達するには、標準系統のゲノム配列という精密な海図を持つことが重要です。国際コンソーシアムの一員としてコムギの6B染色体のゲノム配列の決定プロジェクトに参画しています。また、コムギの在来系統や品種のもつ遺伝的多様性を基礎科学・育種に生かせるように、ゲノムを網羅する品種間多型を検出し、評価しています。

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大規模マッッピング集団の育成


コムギの遺伝資源を保全し、信頼性の高い研究材料を生命科学に供給する

京都大学のコムギ研究は木原均博士のゲノム分析に始まる約100年の歴史を誇ります。これまでの研究に使われた実験系統や探検隊を派遣して収集した野生種や在来系統など、約1万2千系統の遺伝資源を京都大学大学院農学研究科は所蔵しています。本研究室はコムギ遺伝資源の日本のセンターとして、これらの系統を収集・保存・配布し、これからのコムギ研究を促進する実験系統群を育成しています。

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コムギ遺伝資源の自殖による増殖


土壌微生物を対象とした群集遺伝学・生態学的研究

次世代シーケンサを用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析によって、日本の温帯林や東南アジアの熱帯林の土壌微生物(細菌やカビ)の群集構造(組成や多様性)を集団遺伝学や生態学の観点から解析しています。また、同様の方法により、パンコムギ倍数性進化に伴う遺伝的変化と根圏微生物の群集構造の関係を解析しています。


植物を対象とした分子集団遺伝学的研究

植物自然集団に存在するDNAレベルの変異の量とパターンを集団遺伝学的に解析しています。栽培植物の育種に必要な遺伝資源の発掘・確保や栽培化の機構解明のために重要な情報を得られると考えています。コムギ・エギロプス属、アブラナ科、イネ属、マメ科などを解析しています。


外部研究資金獲得状況

2017年度から2021年度
日本学術振興会 科学研究費助成事業
基盤研究(B)
「コムギに染色体切断を誘発する配偶子致死遺伝子の単離と機能解析」(那須田 代表)

2017年度から2021年度
日本医療研究開発機構バイオバンク事業部
ナショナルバイオリソースプロジェクト 中核的拠点整備プログラム
「ライフサイエンス研究用コムギリソースの整備と高品質化」(那須田 代表)

2016年度から2017年度
日本学術振興会国際交流事業 二国間交流事業 ハンガリーとの共同研究(相手先機関 Hungarian Academy of Sciences)
「コムギの異数体を利用したオオムギ単一染色体組換え系統群の育成」(那須田 代表)